バカのための読書術
小谷野 敦
小谷野 敦と言う人をぼくは知らなかった。
ミックさんが書評をしていたのがきっかけで、何冊か読んでみた。
バカのための読書術
そのうちの一冊がこれ。
- 作者: 小谷野敦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2001/01
- メディア: 新書
- 購入: 5人 クリック: 70回
- この商品を含むブログ (107件) を見る
本書は「読書術」と銘打っているが、世間一般の、
少なくともビジネス書コーナーの読書本とは毛色が違う。
小野谷が本書で想定している「バカ」というのは、
「哲学とか数学とか、抽象的なことが苦手な人」、
もっと言えば、フランス現代思想なんかが気になるけど、
バリバリ読破できる、というわけにもいかず悩んでいるような人を
指している。
本書では、珍しいことに「読んではいけない本」がリストされているが、
ここに挙げられている本を見れば、小野谷がどんな読者を想定しているか
わかるというものだ。
何点か抜粋する。
著者 | 著書 |
---|---|
パスカル | パンセ |
小林秀雄 | ほとんどすべて |
バタイユ | エロティシズム |
ロラン・バルト | 表徴の帝国 |
中沢新一 | すべて |
つまり、こういった本を読まなければいけない、と思っているような
人向けに書いているのである。
ぼくは、小野谷による分類によるならば間違いなく「バカ」なので、
この本はきっとぼくのような人に向けられたものだと思う。
「バカ」はどうすべきか
ぼくが読み取った限り、「バカ」が採るべき戦法は、
難解本を避け、歴史を学ぶ
ということだ。
難解本を避ける
ここでいう難解本というのは、デリダやラカンなんかを指している。
こういった本を読まないといけないのかな、と思っているならば、
無理に読む必要はない、と小野谷は言っている。
こうした助言に救われる人もきっといると思われる。
小野田はフランス現代思想そのものを全否定している訳ではなく、
読む価値が無いといってるのでもない*1。
「バカ」が無理をして読むことは無いと言っているのである。
もっとほかにも読むべき本があるからだ。
歴史を学ぶ
まず事実に就くこと。「バカ」はまずそこから始めるべき
というのが小野谷の言い分である。
学者のなかでも、資料や具体的事実に基づかずに、
思弁や印象、理論だけでものを書く人が多い*2。
まして、「バカ」がそれをやっちゃいかんし、
「バカ」でもちゃんと事実を押さえれば、頭のいい相手に勝てる、
ということである。
歴史、といっても網野善彦のようなインテリっぽいやつではなくて、
本当に高校でやるような世界史、日本史の話である*3。
それも「日本の歴史」「世界の歴史」みたいなのを十何巻も読むのではなくて、
小説でもマンガでも映画でもなんでもいいのである。
今、「バカ」なんだからカッコつけてもしょうがない。
まずは、それらを入り口にして、後で知識を深めたり訂正すればよいのである。
ダメなのは、おもしろくなくて頭に入らなかったり、挫折してしまうことだ。
結局、重要なのは、読んで面白くなければ、頭に残らない、 という点なのである。
という小野谷の言葉は、示唆に富んでいる。
もちろんぼくにも心当たりがある。
自分はどうするか
「難解本」に関しては、避けるわけにもいかないので、
小野谷がそうしたように、基礎的な文献から順に当たったり、
英訳に当たったりして攻略するつもりだ。
自分なりにどうやって歴史に取り組むかについては、
別の機会に書くことにしたい。