バカのための読書術

小谷野 敦

小谷野 敦と言う人をぼくは知らなかった。
ミックさんが書評をしていたのがきっかけで、何冊か読んでみた。

バカのための読書術

そのうちの一冊がこれ。

バカのための読書術 (ちくま新書)

バカのための読書術 (ちくま新書)


本書は「読書術」と銘打っているが、世間一般の、
少なくともビジネス書コーナーの読書本とは毛色が違う。


小野谷が本書で想定している「バカ」というのは、
「哲学とか数学とか、抽象的なことが苦手な人」、
もっと言えば、フランス現代思想なんかが気になるけど、
バリバリ読破できる、というわけにもいかず悩んでいるような人を
指している。


本書では、珍しいことに「読んではいけない本」がリストされているが、
ここに挙げられている本を見れば、小野谷がどんな読者を想定しているか
わかるというものだ。


何点か抜粋する。

著者 著書
パスカル パンセ
小林秀雄 ほとんどすべて
バタイユ エロティシズム
ロラン・バルト 表徴の帝国
中沢新一 すべて

つまり、こういった本を読まなければいけない、と思っているような
人向けに書いているのである。


ぼくは、小野谷による分類によるならば間違いなく「バカ」なので、
この本はきっとぼくのような人に向けられたものだと思う。

「バカ」はどうすべきか

ぼくが読み取った限り、「バカ」が採るべき戦法は、
難解本を避け、歴史を学ぶ
ということだ。

難解本を避ける

ここでいう難解本というのは、デリダラカンなんかを指している。
こういった本を読まないといけないのかな、と思っているならば、
無理に読む必要はない、と小野谷は言っている。



こうした助言に救われる人もきっといると思われる。
小野田はフランス現代思想そのものを全否定している訳ではなく、
読む価値が無いといってるのでもない*1
「バカ」が無理をして読むことは無いと言っているのである。
もっとほかにも読むべき本があるからだ。

歴史を学ぶ
まず事実に就くこと。「バカ」はまずそこから始めるべき

というのが小野谷の言い分である。


学者のなかでも、資料や具体的事実に基づかずに、
思弁や印象、理論だけでものを書く人が多い*2
まして、「バカ」がそれをやっちゃいかんし、
「バカ」でもちゃんと事実を押さえれば、頭のいい相手に勝てる、
ということである。


歴史、といっても網野善彦のようなインテリっぽいやつではなくて、
本当に高校でやるような世界史、日本史の話である*3


それも「日本の歴史」「世界の歴史」みたいなのを十何巻も読むのではなくて、
小説でもマンガでも映画でもなんでもいいのである。
今、「バカ」なんだからカッコつけてもしょうがない。
まずは、それらを入り口にして、後で知識を深めたり訂正すればよいのである。


ダメなのは、おもしろくなくて頭に入らなかったり、挫折してしまうことだ。

結局、重要なのは、読んで面白くなければ、頭に残らない、
という点なのである。

という小野谷の言葉は、示唆に富んでいる。
もちろんぼくにも心当たりがある。

自分はどうするか

「難解本」に関しては、避けるわけにもいかないので、
小野谷がそうしたように、基礎的な文献から順に当たったり、
英訳に当たったりして攻略するつもりだ。


自分なりにどうやって歴史に取り組むかについては、
別の機会に書くことにしたい。

*1:一部例外あり

*2:人文・社会科学のはなしです

*3:網野がダメというのではなく、まずは高校レベルができてから、ということである